Aizu-Progressive xr Lab blog

会津大学のVR部であるA-PxLの部員が持ち回りで投稿していくブログです。部員がそれぞれVRに関する出来事やVRにちなんだことについて学んだことを書いていきます。

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バーチャルを「仮想」と訳す君に申したい

こんにちは! A-PxL部員の橋本です。もうそろそろ大学生活の3/4が過ぎようとしていることに驚きを隠せない今日この頃です。さて、他の部員がIT分野(主にUnity)に関してのブログを多数執筆しているので、今回は私が世間のVRの認知に対して思うことを書いていきたいと思います。

今回の記事で私が言いたいことは

VRを仮想現実と訳すのは間違いだ!

ということです。では、なぜそう言えるのか順に解説していきましょう。

バーチャルの意味

バーチャル(virtual)は形容詞で、名詞はバーチュー(virtue)となっています。というわけで、まずはバーチューの意味を辞書を引いて調べてみます。バーチューは「徳」、「善行」、「効力」などを意味しますが、さらに原義に戻ってみると、「そのものをそのものとして在らしめる本来的な力」という意味を持ちます。米国継承英語辞典(The American Heritage Dictionary)では、「Existing in essence or effect though not in actual fact or form」と定義されています。これは 「みかけや形はそうじゃないけど、本質や効果としてはそのもの」 という意味を表します。つまり、「バーチャル〇〇」は「みかけや形は〇〇じゃないけど、実質的には〇〇」を意味することになります。

例えば、「バーチャルマネー」はオンライン上で使用することができるお金(MMORPG内の通貨や電子決済)を表しますが、実際に硬貨や紙幣として目で見たり触ったりすることはできません。しかし、現金と同じように価値を有しており、取引に使うことができる。すなわち、「見かけはお金じゃないけど、効果的にはお金」。だからバーチャルマネーなのです。

他にも、2016年から活動開始したキズナアイを筆頭に今でも増え続けている「バーチャルYouTuber」も同じように考えられますね。すなわち「みかけはYouTuberじゃないけど、実質的にはYouTuber」ってことです。ちなみに、私はそこまでバーチャルYouTuberに詳しくはありません。せいぜい四天王の5人+αくらいです。

(四天王なのに5人とはこれいかに...)

バーチャルの類義語、反意語、そして「仮想」

バーチャルの意味が分かったところで、次にバーチャルの類義語、反意語を調べてみたいと思います。まずはじめにバーチャルの反意語ですが、これはノミナル(nominal)「名目上の」となっています。では、ノミナルの反意語はどうなっているかというと、実はこれはリアル(real)「現実の」が相当します。これが意味することはリアルの反対はバーチャルじゃないくて、リアル=バーチャルなんだよということです。ちなみに、リアルの対を成す言葉はイマジナリ(imaginary)「架空の」が相当すると考えられています。

バーチャルの反意語、類義語について理解していただいたところで、「仮想」について考えてみましょう。仮想は読んでそのまま「仮に想定した」という意味を表します。これは英語にするならsupposedなどと表すべきであり、これはvirtualとは異なる概念であると言えます。つまり、概念的な違いによりバーチャルは「仮想」と訳すことができないのです

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virtualを取り巻く言葉

バーチャルリアリティの意味と訳し方

以上のことより、バーチャルリアリティとは「見た目的には現実じゃないけど、実質的、効果的には現実」を意味し、「現実に似せた偽物の現実」ではありません。そして、「仮想現実」と訳すこともできません。では一体どう訳すればいいのかということですが、これはそのまま「バーチャルリアリティバーチャルリアリティだ」で十分です。どうしても日本語に訳したいという方は「人工現実感」と訳すのがベストということになっています。

また、話は変わりますが、世間では「VR=アタマになんか被ってやるアレ」という認識をされている方も多くいらっしゃることと思います。確かにOculus RiftやHTC ViveといったHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の登場によりVRの人気が出たといっても過言ではないので一概に間違いとは言えないのですが、VRの概念から考えると、HMDはあくまで「VRを体験するための道具」なのでVR=HMDとはなりません。このことについても頭の片隅に置いといてもらえればと思っています。

さらに余談ですが、VR技術とは、「コンピュータなどを使って現実と同じ、もしくは現実では起こりえないことを再現する技術」と言えます。それゆえ、VRの研究対象は心理学からロボティクス、CGやヒューマンインターフェースなど多岐に渡っており、とても広大です。将来的に大学ではVRについて研究したいと思っている高校生は、VRの中のどの分野について研究したいのか高校在学中に決めておくことをお勧めします。

まとめ

  • バーチャルはリアルとほぼ同義語である。そして「仮想」と訳すことができない。そのまま「バーチャル」と言いましょう
  • バーチャルリアリティを日本語にするなら「人工現実」と訳しましょう

特に、今A-PxLに所属している部員、そしてこれからA-PxLに所属することになる未来の部員たちには以上のことを最低限知っておいて欲しいものです。

参考

バーチャルリアリティ学

バーチャルリアリティ学

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: コロナ社
  • 発売日: 2010/12/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

以上の本の内容を試験としたVR技術者認定試験も開かれております。現在のA-PxLにも何名かの合格者がいます。興味がある方はぜひトライしてみましょう!

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