Aizu-Progressive xr Lab blog

会津大学のVR部であるA-PxLの部員が持ち回りで投稿していくブログです。部員がそれぞれVRに関する出来事やVRにちなんだことについて学んだことを書いていきます。

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VR技術者認定試験で出題されたとこの1部分をまとめてみた

こんにちは。学部2年の橋本です。突然ですが皆さんは「バーチャルリアリティ技術者」の資格があることをご存知でしょうか。その資格を得るために受ける試験がVR技術者認定試験です。この試験は以前このブログで私が紹介した本である「バーチャルリアリティ学」の内容から出題されるマーク式の試験です。

バーチャルリアリティ学

バーチャルリアリティ学

この本は1章から8章まであるのですが、そのうち1~4章がセオリーコース、5~8章がアプリケーションコースとなっていて、日本バーチャルリアリティ学会によってそれぞれ年に1回開催されています。そして2018年12/22(土)にセオリーコースの試験が東京大学本郷キャンパスにて開催されます。VR関連で何かしている身としてはこれは受けなくては! と思い切って申し込みしました。勉強は11月の下旬頃から始めて、1章から4章まで1週読み終わってからVR技術者認定試験のホームページから過去問を持ってきて過去問を解き始め、現在4つほどセオリーコースの過去問を解き終えている状況です。やっていくと2章の部分が他の章に比べ出来が悪いことがわかってきました。実際、この2章は身体構造や認知の仕組みなどの内容となっており、難しい用語や単語ばかりが出てくる章であると言えます。そこで、過去問を解いてからもう一度本の2章を見直して、試験で出題されたことがある部分を個人的にまとめてみました。今回はその内容をこちらに書いていこうと思います。(もしもマズイようでしたら削除します)

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目次:

2.1 脳神経系と感覚・運動

2.1.1 脳神経系の解剖学的構造と神経生理学の基礎

中枢神経系の内、大脳がバーチャルリアリティにとって重要な感覚や知覚を担う。大脳は大脳半球と間脳(視床視床下部)からなる。

脳には機能の局在があり、中心溝(頭頂から下方に走る溝)を境界として後部は感覚入力の、前部は運動指令の出力の領域とみなせる。体性感覚は一次体性感覚野を経て二次体性感覚野でより高次な信号処理をされながら頭頂連合野で視覚情報や聴覚情報と統合され総合的な解釈がなされるが、この頭頂連合野は空間知覚において重要な役割を果たしているため、ここを傷つけてしまうと空間定位の障害(遠近・上下左右の識別が困難となる)や地誌的障害(知っている地理が分からなくなる)が起きる。体から感覚野へ至る神経、運動野から体へ至る神経は延髄で交差しているため右脳が左半身を、左脳が右半身を制御しているため、右頭頂連合野の障害では正常な視野でも空間の左半分を無視する半側空間無視を起こす。

空欄補充問題で出題されたことがある。

2.1.2 知覚・認知心理学の基礎

2.1.3 感覚と運動

2.2 視覚

2.2.1 視覚の受容器と神経系

外界の光は網膜、視細胞で電気信号に変換される。視細胞には光感度が異なる錐体(明所視対応)と桿体(暗所視対応)の2種類がある

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この絵が丸々出されたことがあった。左右の視野情報が一次視覚野まで独立に処理されるということも重要

外側膝状体(がいそくしつじょうたい) : 脳の視床領域の一部。「膝状」とは、「膝のように折れ曲がった」という意味。

2.2.2 視覚の基本特性


Natural Hallucinogen

余談だが、ここらへんは2年の4学期のマルチメディア概論という授業で学ぶ内容である。

2.2.3 空間の知覚

VR空間を人工的に再構成するときに重要なことはヒトがいかにして大きさ、奥行きを知覚するかである。網膜は2次元の広がりでしかないが人は3次元空間を知覚できる。これには網膜像に含まれる様々な奥行き手掛かりを利用しているからである。

眼球運動性

  • 調節 : 水晶体の厚み変化。水晶体の厚み制御の筋状態が絶対距離の手掛かりと考えられている
  • 輻輳(ふくそう) : 両眼で対象を注視する際に生じる両眼の内転、外転運動

両眼性(両眼視差)

目が左右に2つあることから生じる奥行きの違いによる像のズレ。2つの画像が脳で融合して立体的に知覚される。市販されているVRHMDは両眼視差を考慮した映像を作り出し立体知覚体験を提供している。ランダムドットステレオグラムをセットで覚えよう

https://www.lyt.jp/meta/howto.htm

単眼性(絵画的手掛かり)

遮蔽、遠近法、テクスチャ勾配、速度勾配、キャストシャドー、陰影など。陰影についてだが、光源位置が決まらないと凹凸が曖昧になる。しかし、ヒトは「光源は上にある」という仮定を適用し曖昧性を解決する。このような仮定を「自然制約条件」と呼び、知覚処理の様々な場所で用いられている

2.2.4 自己運動の知覚

オプティックフロー(網膜に投影された運動)は外界の物体の運動からのみでなく自己身体の運動からも生じる。そのため、視覚は網膜像の運動を物体の運動なのか自分の運動なのかを分離する必要が出てくる。一般的には視野の広い領域の運動や奥に提示された運動は自己運動と解釈され、小さい領域の運動や手前の運動は物体の運動と解釈される。列車の窓から隣の動き出した列車を見る時、自分が動いている感覚になる。視野の広い領域が動いているため自身が動いていると解釈するのだが、実際には自分が動いているのではないというものだ。これは自己運動感(ベクション)と呼ばれる。

2.2.5 高次視覚

知識と注意を要する認識を高次視覚と呼ぶが、その中でも特に顔の認識では特殊な処理が行われている。

https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2014/nr20141010/nr20141010.html

2.3 聴覚

2.3.1 聴覚系の構造

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この画像もまんま出されたことがあった。

外耳と中耳は特定の周波数帯域を伝えやすい特性(伝達関数TF:transfer function)を持っていて、これが聴覚系の周波数ごとの感度の違いの主要な要因となっている。蝸牛(かぎゅう)の中には基底膜という膜があり蝸牛管を上下に分けており、この膜の上に有毛細胞によって中耳を伝わってきた振動が神経信号に変換される。

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2.3.2 聴覚の問題と音脈分疑

聴覚系が音源やその位置を特定するには設定不良性があり、認識しようとしている次元に対し、使える次元が圧倒的に少ない。そこで、聴覚系は音源から伝送路を伝わってくる際の物理的条件を聴覚系の情報処理における制約条件として利用している。

2.3.3 聴覚による高さ、大きさ、音色、時間の知覚

周波数が高くなるにつれ音が高くなるように感じる。しかし、絶対的な音の高さと同時に2倍(オクターブ)の関係にある周波数同士が等しく感じられるようになり、オクターブ毎に繰り返しが感じられる。この二重性が音の高さの知覚での大きな特徴であり、前者の絶対的高さをハイト(height)、後者のオクターブ毎の高さをクロマ(chroma)と呼ぶ。この二重性は蝸牛の周波数符号化の二重性と関係し、ハイトは場所、クロマは位相固定による符号化がもたらす知覚と考えられる

人間の可聴周波数は20~20kHz。感度は4000Hzがピーク。

音色は同じ音程を同じ大きさで演奏した時の楽器の違い的なもの。音色の違いは倍音構造の違いが主要だが、エンヴェロープ(振幅の時間的変動パタン)の影響も大きい。

聴覚の時間解像度はホワイトノイズ(全ての周波数で同じ強度になるノイズ)の無音部分の検出によって測定される。解像度は2~3msと非常に高い。

2.3.4 聴覚による空間知覚

2.4 体性感覚・内臓感覚

2.4.1 体性感覚・内臓感覚の分類と神経機構

これらの感覚は視覚、聴覚、味覚、嗅覚、前庭感覚以外の感覚を指す。

2.4.2 皮膚感覚

体性感覚の内、皮膚で感じる表在性の感覚がこれ。皮膚感覚受容器には触覚情報担当の機械受容器、温度情報担当の温度受容器、痛覚情報担当の侵害受容器がある。

触覚

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有毛部皮膚にはマイスナー小体がないが毛包受容器が存在。機会受容器の神経繊維は有髄で比較的太いAβ繊維。ヒトの無毛部の機械受容野単位(機械受容ユニット)は受容野の形態と神経発射特性から4種類に分類される。

触2点閾は皮膚上の2点を同時に刺激した時に2点の刺激と感じられる最小の距離のこと。指先、唇、舌などは小さく(2~3mm)、上腕、背、腹、大腿などは大きい(15~30mm)

温度感覚

温覚と冷覚に分けられる。

  • 温覚受容機
    • 自由神経終末
    • 無髄繊維(C繊維)
    • 40~45度で神経発射
    • 45度以上では熱痛覚と判定
  • 冷覚受容器
    • 自由神経終末
    • 有髄繊維(Aδ繊維)
    • 30度付近で神経発射
    • 15度以下では冷痛覚と判定

温覚も冷覚も感じない温度を無関帯といい、31~36度の範囲である。

温覚と冷覚の違いをセットで覚えると良い。

痛覚

  • 体性痛覚
    • 表在性痛覚

      受容器は自由神経終末。神経繊維は有髄繊維(Aδ繊維。速い痛み対応)と無髄繊維(C繊維。遅い痛み対応)。痛みは急性の痛み(事故による怪我)と慢性の痛み(慢性痛。除去が望ましい「有用性のない痛み」)に分けられる。

    • 深部痛覚

      筋肉、骨、関節、結合組織からの痛み。

  • 内蔵性痛覚

2.4.3 深部感覚

四肢の位置関係や動き、加わる力などを検出。受容器は筋肉、腱、関節に存在。体内部の情報を受容するため、固有受容器とも呼ばれる。そのため深部感覚は固有感覚とも呼ばれるようだ。固有受容器には筋紡錘、ゴルジ腱器官、関節受容器がある。

深部感覚には位置覚、運動覚、力覚がある。

  • 位置覚 : 自分の四肢の相対位置を知る感覚(筋紡錘、ゴルジ腱器官、関節受容器)
  • 運動覚 : 自分の体を動かす時の動きの速さや方向を知る感覚(筋紡錘、ゴルジ腱器官、関節受容器)
  • 力覚 : 抵抗に逆らって関節位置を保持するための筋力を推定する感覚(筋紡錘、ゴルジ腱器官)

この3つも特に重要。

2.4.5 内臓感覚

内臓からの情報は内臓求心性繊維により中枢に伝達される。この繊維は自律神経系に属し、この情報は通常は意識されることがない。そして特定の場合にのみ意識化される。これは内臓受容器の役目が体内の恒常性を保つためであるからである

2.5 前庭感覚

2.5.1 前庭感覚の受容器と神経系

受容器は左右一対の器官で、各側3個の半規管(頭部の回転運動)と2個の耳石器(直線運動や傾斜)からなる。

  • 半規管

    角加速度受容器。前半規管、後半規管、水平半規管からなりこれらは互いにほぼ直交する3平面上に位置する(これらが3次元の軸(x, y, z)になる)。内部はリンパ液で満たされている

  • 耳石器

    • 卵形嚢

      • 頭部が成立位にある時 : 水平
      • 水平方向の加速度や頭部の傾斜がこれを刺激
    • 球形嚢

      • 頭部が成立位にある時 : 垂直
      • 垂直運動がこれを刺激

こちらも違いをセットで覚えましょう。

2.5.2 平衡機能の基本特性

  • 前庭動眼反射
    • 半規管形

      • 視線を空間内で一定に保ち、網膜像のブレを最小に抑えるように働く。
      • 頭部回転と逆方向の緩徐な眼球運動と同方向の急速眼球運動を交互に繰り返す。
    • 耳石器形

      • 代償性眼球運動 : 直線加速度が加わった時に起こる
      • 眼球反対回旋 : 頭を傾けた時に起こる
  • 前庭脊髄反射

    • 外乱に対する身体平衡の維持と視野の網膜像の動きを抑える機能
    • 姿勢の崩れや頭位の変化を回復するように四肢を伸展・屈曲させる

正誤問題で出題されたことがあった。かなり難しい。

2.5.3 身体運動と傾斜の知覚特性

回転は主に半規管によって知覚される。以下出題された部分の抜粋

  • 水平回転を知覚する閾値0.1~0.3deg/s2(単位が大事!!)
  • ヨー回転の閾値が低い傾向
  • 等角加速度で加速中に水平方向の角速度を推定させると20~40sまでは角速度が増すように感じるがその後は回転感覚が減衰し、減速していると感じる
  • 静的なロール傾斜を知覚する閾値1.5~2.2deg
  • 持続的な直線加速度の知覚の閾値はx軸方向で6cm/s2, z軸方向で10cm/s2

値、単位が違うものが混じる選択肢から選ばされる問題があった。

2.5.4 動揺病

VRにおいてはVR酔い、サイバー酔いとも言われる。感受性は一般に女性の方が男性より高い。12~15歳がピークでその後は加齢に伴って低下。神経質な人、心配性の人はより高くなり、外交的、積極的な人は低い傾向にある。誘起メカニズムは感覚矛盾説(身体の運動や姿勢の情報を受容する感覚系間で矛盾があることで動揺病が発生する)で説明されるが、この仮説だけでは説明できない現象もある

正誤問題で多く出る。特に、感覚矛盾説だけでは説明できない事象もあることを覚えておくと良い。というか、この知識は部員全員に是非知ってもらいたい。

2.5.5 前庭感覚と視覚の相互作用

前庭感覚と視覚は関連が多い。視野の広範囲が動いていると自分が動いている感覚になるのをベクション(視覚誘導自己運動感覚)といったが、この刺激を長く続けると視覚性動揺病が発生する。しかし、ベクションの強さと酔いの感覚は必ずしも一致しないため、ベクションが動揺病の原因だとは一概に言えない

2.6 味覚・嗅覚

2.6.1 味覚の受容器と神経系

基本5味は「甘・酸・塩・苦・うま」であり、「辛」はない!!

  • 甘み、うま味、苦味の味物質

    • 分子量大
    • 細胞外で七回膜貫通型受容体に結合、細部内Gタンパク質を介して情報のみが細胞内へ伝えられる
  • 塩味、酸味の味物質

ここも違いを押さえて覚えるところ

2.6.2 味覚の特性

ヒトには25種類の苦味受容体がある。

2.6.3 嗅覚の受容器と神経系

ヒトには350種類以上の匂い受容体がある。研究により匂いの符号化などは嗅球(嗅覚情報処理に関わる、脊椎動物の脳の組織)以降は梨状皮質(第一次嗅覚野)、眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつ。第二次嗅覚野)、海馬などの多くの領域が関与していることがわかってきた。

25と350という数字を覚えておくだけでもだいぶ大きい。

2.6.4 嗅覚の特性

2.7 モダリティ間相互作用と認知特性

2.7.1 視覚と聴覚の相互作用

モダリティとは外界から情報を受け取ったり身体の情報をモニタリングするときのセンサの違い。最終的な外界の知覚の特性はモダリティ間相互作用が一般に相補的であることからモダリティ毎の特性の単純加算では明らかにできない

相互作用のうち、視覚と聴覚が最も研究が進んでいる。

2.7.2 体性感覚とその他のモダリティの相互作用

視覚が体性感覚に与える影響としてシュード・ハプティクス現象がある。簡単に言うと、PCのマウスなどを動かす時、マウスの動かした分に比べディスプレイでのポインターの動きが早い(大きい)と腕が軽く感じ、逆に動かした分に比べポインターの動きがトロイ(小さい)と腕に力覚が感じられるというもの。

近年、身体の動きや情動によって低次の視覚や聴覚が影響を受けるということが報告されるようになった。例えば、身体の動きがある時には時間順序判断のパフォーマンスが向上するなどの時間的な精度が向上することなどがある。

正誤問題でよく出題されていた。運動能力が向上する訳ではないことに注意。

2.7.3 思考、記憶と学習

記憶内容の保持期間によって短期貯蔵庫と長期貯蔵庫の2つの記憶があると考えるモデル(2重貯蔵モデル)がある。

  • 短期貯蔵庫 : 短期間保存するために使われる記憶。PCにおけるメモリに相当

    • 容量は7プラマイ2。語呂合わせなどで覚えられる量が変化するのはこれに由来。
    • 情報処理の観点から捉えると短期貯蔵庫は作動記憶と呼ばれる。
  • 長期貯蔵庫 : 永続的な記憶

    • 意味記憶 : 概念や意味などの記憶
    • エピソード記憶 : 特定の時間と場所に関係した記憶
    • 手続き記憶 : スキルを身につけること。

潜在記憶 : 覚えている自覚なしにその後の行動や判断に影響を与える記憶

学習(learning) : 知識やスキルの獲得という狭義の学習のみならず、訓練による知覚精度向上なども学習過程として考える必要がある。

ここも空欄埋め問題として出されたことがある。それぞれの違いなどを押さえておく必要がある。

2.7.4 アフォーダンス

J.J. Gibsonによる造語。ある生体にとって環境が持つ意味や価値のこと。例えば、川にかかる一本の丸太をヒトが見ると「渡るもの」として受け取るが、象がこれをみても「丸太」としてしか認識しない。

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終わりに

今回はバーチャルリアリティ学の2章のテストに出やすいところをピックアップしてまとめてみました。この部分を抑えるだけでも2章の大体は網羅できると思います。この書籍には他にも3章などでモーションセンサや、BMI(ブレインマシンインターフェース)、5章でARなどの話題も取り扱っており、XR技術者にとっては必要不可欠な要素が 詰め込まれています。ぜひ購読して試験を受けてあなたもVR技術者としての資格を手に入れましょう!!

※ブログ内で使われている画像は書籍(バーチャルリアリティ学)の他に今年の11/17(日)に東大で開かれた試験対策講習会での資料を参考にして作成しました。

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